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大阪高等裁判所 昭和57年(行コ)59号 判決 1983年9月30日

和歌山市紀三井寺七三六番地の九

控訴人

株式会社大和パッケージ

右代表者代表取締役

福本旭

右訴訟代理人弁護士

香川公一

井上善雄

和歌山市湊通り丁北一丁目一番地

和歌山税務署長

被控訴人

木村富

右指定代理人

布村重成

国友純司

勝間甚之焏

木下昭夫

吉田真明

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「一 原判決を取消す。二 被控訴人が控訴人に対し昭和五三年六月三〇日付でなした昭和五〇年分以降の法人税の青色申告承認の取消処分はこれを取消す。三 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張関係は、次に訂正・付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用し、証拠関係は、本件記録中原審及び当審における証拠目録記載のとおりであるから、これを引用する。

(訂正)

一  原判決三枚目表五行目の「を備付け、記録・保存」を「の備付け、記録及び保存を」と改め、八行目の「岡八重子」の次に(以下、合わせて「岡税理士」という。)を挿入する。

二  同五枚目表五行目の「もので」の次に「あって、国税庁の税務運営方針(昭和五一年)を知る岡税理士が右理由の開示を求めたことには合理性が」を、裏六行目の次に改正して「仮に右規定が帳簿書類の不提示の場合を包含するとしても、単に提示要求に対し不提示であったというだけでなく、帳簿書類の不提示が違法な帳簿書類の備付け等の義務違反に基づくことが客観的事情からして合理的に推認される場合とか、不合理かつ一貫している場合など、備付け、記録、保存を欠く場合と客観的に同視し得る場合に限られるものであるところ、本件において右のような事情はない。」をそれぞれ挿入する。

三  同七枚目表五行目の「の営業の本拠」を「方」と改める。

四  同八枚目表三行目の「辻博」の次に「(以下「辻係官」という。)を挿入する。

(控訴人の主張)

本件処分は、次の理由によって違法であるから取消されるべきである。

一  処分権の濫用である。

被控訴人係官らは、前記税務運営方針に反し、控訴人代表者らに対し納得を得て調査の協力を求めるのではなく、かたくなにかつ威圧的に質問検査権と称して帳簿書類の提示を要求したので、自己の申告の適正さに自信を持ち帳簿書類を事前に準備していた控訴人らとの間に対立が生じて、帳簿書類の提示拒否といわれる事能が発生し、さらに違法な反面調査が強行されたものであって、被控訴人係官の権力的態度に挑発されて反発した行為が巧みに提示拒否に仕立てられたものであるから、本件処分は処分権の濫用である。

二  処分の公正事前手続が欠如する。

本件処分のような不利益処分をなすに当っては、被処分者に対し事前に事実関係を告知し、これに対する弁明の機会を与えなければならないところ、本件処分は、事前の告知も弁明の機会も全くなかったから、違法である。

三  異議段階において帳簿書類を提示した。

本件処分は、当然に異議手続を含むものであり、仮にそうでなかったとしても処分者に再検討の機会を与えた手続であるところ、控訴人は、本件処分に対する異議申立に係る審理の際に、帳簿書類を提示して、その不提示はなかったことになったから、本件処分は違法である。

(被控訴人の主張)

控訴人の前記主張はすべて争う。

理由

一  当裁判所も控訴人の請求は失当として棄却すべきものと判断するものであって、その理由は、次に付加・訂正するほか、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一二枚目表三行目の「辻博」の次に「、当審証人岡八重子(一部)」を、同行の「(一部)」の次に「及び弁論の全趣旨」をそれぞれ挿入し、六行目の「所部」から七行目のう。)」までを「所属の上席国税調査官である稲垣係官」と改め、裏二行目の「係る」の次に「控訴人の税務代理人である」を、四行目の「所得」の次に「金額」をそれぞれ挿入、五行目の「同税理士は」を「顧問先の控訴人が調査対象とされたことに不満を抱いた同税理士は、国税庁の税務運営方針を根拠に調査」と、六行目の「押問答」から七行目までを「稲垣係官と押問答となり、控訴人代表者らは結局その日は帳簿書類を稲垣係官に提示しなかった。」とそれぞれ改める。

2  同一三枚目表四行目の「求め」を「求めるとともに、調査の拒否には罰則がある旨告知し」と、七行目の「係官は、」を「係官の」とそれぞれ改め、七、八行目の「辻博(以下、辻係官という。)」を「である辻係官は稲垣係官」を、裏四行目の「って、」の次に「控訴人に対し」を、一〇行目の「係官を」の次に「控訴人方に」を、末行の「取消す旨」の次に「岡税理士に対し」をそれぞれ挿入する。

3  同一四枚目表二行目の「の証言」を「、当審証人岡八重子の各証言」と改め、裏七行目の「ので」の次に「あり、また、当審証人岡八重子の証言によれば、税理士岡八重子は、昭和五二年一一月一四日、同月一八日、昭和五三年一月二七日と同年六月一三日の四回の調査に立会った際、控訴人の三事業年度の総勘定元帳と振替伝票を紙袋に入れて持っており、六月一三日には、総勘定元帳を机の上に置き振替伝票も紙袋から出して机の上に置こうとしたところ、辻係官が青色確認の調査ではないといって待ったをし、断わられたというので」を挿入し、同行の「右証言」を「右各証言」と改める。

4  同一五枚目表六行目の「ないこと」を「ないし」と、九行目の「岡証言」を「前記各証言」とそれぞれ改め、末行の末尾に「なお、当審証人岡八重子は控訴人の所得の調査であればその帳簿を見せないつもりであった旨証言している。」を加え、裏三行目の「の証言」を「、当審証人岡八重子の各証言」と改める。

5  同一六枚目表初行の「なもので」の次に「あって、岡税理士が右理由の開示を求めたことには合理性が」を挿入する。

6  同一九枚目裏八行目の「二項」を「二号」と改める。

7  同二一枚目裏一〇行目の次に改行して左のとおり挿入する。

「6 処分権の濫用であるとの主張について

前記二認定の事実関係に照らせば、控訴人主張のように被控訴人係官に権力的な態度があったとしても、本件処分は処分権の濫用であると認めることができない。

7 処分の公正事前手続が欠如するとの主張について

青色申告承認の取消処分をなすに当って、被処分者に対し事前の告知をし弁明の機会を与えなければならないとする法律上の規定や根拠は存在しない。

8  異議段階において帳簿書類を提示したとの主張について

異議審理庁は、原処分(本件処分)に対する不服申立について理由があるかどうかを審理するにすぎないものであって、原処分をし直すものではないから、控訴人が異議申立に係る審理の際に帳簿書類を提示したことをもって、本件調査の際に帳簿書類を提示したことにはならない。」

二  よって、前記判断と同旨の原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、民訴法三八四条によりこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき同法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 仲西二郎 裁判官 長谷喜仁 裁判官 下村浩蔵)

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